歯周病治療
歯周病治療
まずは、歯周病について知りましょう
歯周病はお口の中の2大疾患のひとつで、歯を失う要因としては第一位の病気です。そして、日本の成人の約8割がかかっていると言われる国民病でもあります。お口の中には、全部で28本の歯が存在しています(親知らずを除く)。それぞれの歯の根っこはあごの骨の中に埋まっており、あごの骨と歯の根っこをつなぐ「歯周組織(ししゅうそしき)」によって支えられています。歯周病は、この歯周組織が歯周病菌によって破壊されてしまう病気です。歯周組織がなくなると歯を支えることができなくなりますので、最終的には歯が抜けてしまうのです。
歯周病は、その原因となる歯周病菌を取り除く治療をすることで、進行を止めたり、症状を改善したりすることはできます。しかし、歯周病によって破壊された歯周組織は、自然に元の状態へ戻ることはありません。
1. 歯周病の進み方
かなり病気が進行するまで、目立った症状が現れません。そのため「痛いな」「歯が揺れてよく噛めないな」こんな症状が出た時には、歯周病はかなり進行しています。最悪の場合、歯を抜くしかなくなることもあります。このように目立った症状がないまま静かに進行していく歯周病は、別名「サイレントディジーズ(静かなる病気)」「サイレントキラー(静かな殺し屋)」と呼ばれる恐ろしい病気なのです。
歯周病は、その原因となる歯周病菌を取り除く治療をすることで、進行を止めたり、症状を改善したりすることはできます。しかし、歯周病によって破壊された歯周組織は、自然に元の状態へ戻ることはありません。
あなたの命すら狙う、歯周病菌
歯周病はあごの骨を溶かし、歯を失わせる怖い病気。しかも目立った症状がなく進行するため、気づいた時には手遅れであることも少なくない恐ろしい病気だとお話してきました。実は歯周病にはさらにもう一つ恐ろしい面があります。それは、動脈硬化や心筋伷塞、脳卒中といった命に関わる重大な病気にも関わっているということが証明されています。
歯周病を引き起こし悪化させる諸悪の根源は、歯周病菌です。歯周病が悪化すると、増殖した歯周病菌が血管の中に入り込み毒素を出します。この毒素はコレステロールを血管内に沈着させて血管を狭めたり、血管の細胞を傷つけたりして、動脈硬化や心筋伷塞を引き起こすのです。
歯周病菌は、あなたの口の中に留まらず、血管を通じて体のあちこちで悪さをします。そしてあなたの命すら脅かすというわけです。
その他にも、歯周病菌は糖尿病を悪化させたり、早産・低体重児出産の原因になることがわかっています。
歯周病チェックリスト
• 歯茎が腫れている(色が赤い。プクッとした感じがある)
• 歯磨きをすると血が出る
• 歯茎がムズムズする。むず痒い感じがする
• 体調が悪いと歯が浮いたような感じがする
• 口臭がある
• 口の中がネバネバする
• 歯茎から膿が出る
• 固いものが食べづらい
• 歯がグラグラする。歯が揺れて噛みにくい
• 歯が伸びた気がする
喫煙の影響
喫煙は歯周病を増悪させる重要な因子です。タバコの煙に含有されるニコチン、タール、多数の発癌物質などが、血管の収縮を引き起こし、血液量の低下や免疫機能の低下を引き起こすことが明らかになっています。喫煙することにより、術後の治癒が悪くなる可能性があるので、禁煙をお勧めします。
2. 歯周病の治療
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診査・診断
事前にご記入いただいた問診表をもとにお口の状況を確認します。レントゲン診断、歯肉の状態、歯の動揺度、噛み合わせなどをチェックいたします。
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初期治療
検査をもとに治療計画を作成。初期段階では歯石除去、ブラッシングなどをメインに行って口腔内の改善を目指します。ブラッシングでも症状の改善が難しい場合は、スケーラーという器具で歯の表面についている歯石を除去(スケーリング)。
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ルートプレーニング、再評価
より症状が進行している場合は、歯と歯茎の間の奥(歯周ポケット)に付着しているプラークや歯石を掃除していきます。歯茎の溝に隠れたばい菌を徹底的に除去する治療を行います。治療時間は、1回あたり30~45分ほど。これを4~6回ぐらいに分けて行っていきます。根気がいりますが、健康なお口を目指して一緒に頑張りましょう。なお、ここまでの工程は、すべて歯科衛生士がメインになって行います。歯科衛生士は、歯科医師同様に国家資格です。患者さんの中には「先生が治療しないのだから、大した治療ではないのだろう」と考えられる方もいらっしゃいますが、それは間違いです。実は、ここまでの治療(専門用語で「歯周基本治療」と言います)は非常に重要で、私は歯医者が行う治療よりも大切だと考えています。ぜひ、「しっかり頑張るぞ!」という強いお気持ちを持って臨んでいただければ幸いです。
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歯周外科治療・歯周組織再生療法・再評価
重症の場合は歯周外科治療を行います。代表的な方法として「フラップ手術」があります。局所麻酔を施したうえで、歯茎を切開し、大きくなった歯周ポケット内部のプラーク、歯石、感染組織などを取り除く方法です。また歯周組織再生療法を選択することもあります。
歯周外科治療(フラップ)歯周組織再生療法(リグロス) - 5
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メインテナンス
治療が完了しても終わりではありません。ブラッシングのチェックや、歯科医院でのクリーニングを継続することで、良い状態をキープできます。是非定期的に健診をお受けください。
残念ながら、歯周病菌は0にはならないものだからです。私たちの口の中には常在菌がいます。その中で歯周病菌という悪玉菌の割合が多くなると、歯周病になるわけです。そして、歯周病菌の割合が多くなっていくと、歯周病は加速度的に進行してしまいます。つまり、定期的にメインテナンスに来てケアしていただかないと、再発するリスクが非常に高くなります。「自分で正しい歯磨きができるようになったから大丈夫」という方もいらっしゃるかもしれませんが、それは危険です。もちろん、歯周病治療が終わった後も、きちんと丁寧に歯磨きをすることは必須。しかし、いくら歯磨きが上手になっても、歯周病になって歯茎が下がった歯=長くなった歯は、普通の方よりも歯磨きが難しくなっています。
また、被せものをしたり、ブリッジや入れ歯を入れたり、インプラントを埋めたりすれば、さらに歯磨きが難しくなります。どうしても歯ブラシが当たってない場所、歯間ブラシが当たってない場所が出てきて、磨き残しが発生してしまうのです。メインテナンスでは、そういったところもフォローします。メインテナンスの頻度としては、3ヵ月に1回程度が基本です。
歯磨きが非常に上手な方なら4ヵ月~半年に1回。あまり歯磨きが上手でない方や歯周病が完璧に治らない方なら、3ヵ月よりも短くなる場合もあります。通院ペースは人それぞれです。
3. 歯周外科処置(フラップ術)
フラップとは?
歯周病により深くなってしまった歯周ポケットを外科的に除去する事、また、通常のスケーリング・ルートプレーニングでは器具の届かない歯石を、歯茎を切開して開く事で目視下で直接的に除去する事を目的とします。これにより、悪くなってしまった歯肉の状態を改善することが出来ます。
治療の流れ
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麻酔をします。
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歯肉を切開します。
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明視野で歯石や病変部を除去していきます。
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糸で縫合します。
• 手術の翌日には消毒で来院して下さい。
• 手術日から一週間後に糸抜きをします。
• さらに一・二週間後位に手術部位の治癒状態を確認します。
• 手術後は激しい運動や飲酒、喫煙はできません。
• 翌日からは運動や飲酒も問題ありません。
• 手術後、歯茎が引き締まり知覚過敏の症状が出る可能性があります。
適応症は?
徹底したスケーリングやルートプレーニングなど初期治療が終わっても、4mm以上の歯周ポケットが残存する場合、歯肉の下に明らかに歯石があることがわかっている場合に適応となります。
メリット・デメリット
残存する歯周ポケットを確実に除去することが可能です。
歯茎を開いて目視下で歯石を除去が可能で、骨や根っこの状態も肉眼で確認することも出来ます。 歯肉を外科的に除去しますので、切除した分歯茎が下へ下がってしまいます。これに伴い見た目の変化や知覚過敏といった症状が出ることがあります。失ってしまった歯肉や骨が回復しない場合、再生医療術併用が必要となる場合があります。
4. 歯を支える組織を再生する「リグロス」
歯を支える歯周組織は、そのまま放っておいても再生することはありません。そこでこの歯周組織の再生に効果が期待できる薬剤として開発されたのが「リグロス」です。リグロスは歯周病の進行によって破壊された歯周組織を再生する効果があります。リグロスを使った「歯周組織再生療法(ししゅうそしきさいせいりょうほう)」という手術を伴う治療をすることで、組織の再生が可能となるため、歯周病によって歯が抜けてしまうことを防ぐことができます。
リグロスはトラフェルミンとも呼ばれ、主成分は「bFGF」というタンパク質です。リグロスがなぜ破壊された歯周組織を再生できるかというと、「bFGF」が骨や筋肉などの細胞の増殖や分化を促して、成長させるタンパク質だからです。
さらにリグロスには、血管を新たに作り出す作用(血管新生作用)が含まれていますので、歯ぐきやあごの骨といった歯を支える組織をしっかりと再生させられます。さらに、リグロスを使った再生治療は、歯が揺れていることで生じる痛みや不快感、しっかり噛めないというような患者さんのご負担も軽減できます。
このようにリグロスの効果は、重度の歯周病であっても歯を抜かずに済んだり、歯周病そのものの進行を食い止めたりできる可能性をより増すことができます。重度の歯周病でお悩みの患者さんにとっては、朗報と言えるでしょう。ただしブラッシングが上手にできていることが条件です。
どんな患者さんが適応となり、どんな患者さんには不適応あるいは禁忌なのでしょうか?
リグロスの適応症
歯周病の基本治療が終了している方
リグロスによる再生療法は、ご来院いただいてすぐに行えるわけではありません。歯周病の根本原因である歯周病菌(プラークや歯石)を除去する「歯周病の基本治療」を済ませて、歯ぐきを健康な状態にしてからでないと、リグロスの効果が発揮できないからです。 薬剤の効果をしっかりと活かすためにも、歯周病の基本治療が終わった患者さんを対象としています。
縦方向に垂直的に破壊されているケース
専門的な言い方をすると「垂直的骨欠損(すいちょくてきこつけっそん)」という状態です。これは歯周病の進行によって、あごの骨全体が破壊されているのではなく、ある特定の箇所のあごの骨が縦方向に溶けている状態を指します。このような状態で歯周病が進行している場合は、悪化の速度がとても速いと言われています。
こうした状況は、リグロスの持つ再生能力によって、あごの骨を再生し、歯周病の進行を緩やかにしたり食い止めたりできます。
喫煙していない方
喫煙習慣の無い方は、そうでない方に比べてリグロスの効果が出やすいと言われています、実際に当院の治療実績を振り返っても、タバコを吸っていない方のほうがしっかりと効果が出ているという事実が確認できます。喫煙なさっている患者さんの場合、治療効果は限定的とお考えください。
リグロスの禁忌症
癌(がん)の既往歴のある方
リグロスは組織の再生作用が大変強いため、正常な細胞と同時に癌(がん)細胞も活性化されてしまう可能性があると言われています。そのため、癌(がん)の既往がある方には向いていません。
リグロスは、治療費のご不安を抱える患者さんにも優しい薬剤です。リグロスは保険適用対象ですので、健康保険を使って治療することができます。通常の保険診療と同様に、患者さんの費用負担が治療費の3割で済みますので、費用の心配が少ない状態で治療に専念いただけます。
歯を支える組織の再生療法に使える薬剤には、ほかにも「エムドゲイン」というものが存在します。しかしエムドゲインを用いた治療には、健康保険を使うことができません。リグロスは、歯科の再生治療において健康保険が使える唯一の薬剤なのです。
歯周組織再生療法を成功させるために必要な「患者さんのご協力」とは、歯とお口のセルフケアをしかりと行っていただくことです。歯ブラシでの清掃はもちろん、歯と歯の間を清掃する歯間ブラシ、デンタルフロスを使用したプラークコントロールなどをきちんと実施していただくことが、治療を失敗させないために不可欠な条件なのです。
セルフケアというと、患者さんの行動に任せきりな印象を抱く方もいらっしゃるかもしれません。当院はご自宅で行っていただくケアについても、しっかりとフォローをいたします。ご来院いただいた際には歯周病菌を取り除くための歯のクリーニングや歯石除去をしっかりと行い、さらにご自宅でのケアや生活習慣、そして食事指導についてもアドバイスを差し上げています。
「歯周組織が治る力」は、年齢が若い方、またタバコを吸っていない方が高い傾向にあります。ですが、歯ぐきや骨の性質によっても異なり、これは患者さん個々によって違いがあるものです。また、治療を行う部位(上の歯なのか、下の歯なのか等)によっても異なるので、お気軽にご相談ください。
歯科医院と患者さんとが、二人三脚で歯周病治療を進めていくこと。それがリグロスを使用した歯周組織再生療法を失敗に終わらせない一番のポイントだと考えております。
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